相手が応えられない要求

子育て失敗の原因を簡単にいえば子供が応えられない要求をすること。

結婚失敗の原因も簡単にいえば、相手が応えられない要求をすること。

・・・だと思います。

とても簡単なことですが、「無理が通れば道理引っ込む」で、普通に育てれば普通にその子(その人)らしく健やかに育つところを、人間(親)が無理な要求を押しつけることによって、子(人間)はどんどん歪んでいってしまうのです。

親子関係というものをひどく誤解している人がいます。

「子供は親の言うことを聞かなければならないものだ」という封建的な「思想」に支配されている人です。「ひどい誤解」はその「思想」の影響から脱していないために存在し、人に上下関係をつけ、親は上で、子は下だという「狂った当たり前」を通そうとします。

アンガーマネジメントがうまくできない人の中にも、上下の意識に支配されていることが原因だという人が少なくありません。

「自分が上なのになぜお前はそうなんだ?」

「あなたが上なのになぜそうなんですか?」

このような要求(相手への「なぜ」は要求の表れです)によって怒りに支配され、不快な感情や不快な思考に支配されます。つまり、このような要求がそもそもない人(そんな人も珍しくありません)は、それだけ怒りや不快な思考に支配されることがないというわけです。

この非常にやっかいな「上下の意識」は、親子や職場にあるばかりではありません。

日本人によく見られるのは、「マナー意識」から生じた「上下の意識」です。

「自分はマナーに従った言動をしている。しかしこの男/この女は、マナーに反している。だから言ってやらなければならない」

というような意識と考え方です。そこには「マナーに従う者=上位」「マナーに反する者=下位」という、これも極めて「危険で狂った常識」があります。

このような「狂った常識」は、「相手への断罪という思考」のもとになり、それは、殺人や戦争の原因にもなります。

「相手への断罪という思考」とは、当教室の基礎講座でも重要な項目になっている「ワルイ思考」です。相手を「悪い」と決める思考のことで、この思考さえしなければ、自分も、相手も、世界も、みんなが平和でいられます。

そもそも私たち一人ひとりは、誰か特定の相手を断罪する資格というものを持ちません。

もしその相手が社会的に悪であると思われるのであれば、警察に通報して審議してもらうようにするという方法が私たちには与えられています。

そのような方法をみんなが共有している現代社会においては、一人対一人という関係の中だけで、互いに断罪しあったり、戦ったり、殺しあったりする必要はないばかりか、そんなことをすれば逆に自分も反社会的な存在になってしまい、逮捕されるという方向に向かうのです。

個人として、他者を断罪する権利というのは誰にもありません。

その権利があると考えることによって、まず苦しむのは自分と相手という両方の当事者であり、当事者の一方である相手だけを苦しめてやりたいと考えても、それは決してかなわないことですし、もしかなったとしたら、今度は自分が社会的な悪に分類されるという結果になるだけなのです。

アンガーマネジメントの基本として、人を悪いと考えないことというのは非常に大切で必須の生き方になります。

この「生き方」は、「スキル」と考えてもいいと思います。スキルが最初から身についていてその人の生き方そのものになっている人は、そうでない人に比べたら、苦しみの少ない人生を送ることができるのです。

そして、特に意識して避けたいのが、自分の要求に応えられない相手を悪いと断罪することです。

これをやってしまっている人は、家庭不和をもたらし、子育てで失敗し、職場の人間関係もうまくいかず、人から信頼されず、人との共感が希薄で、苦しみが多く、演技や闘争ばかりの人生を送るしかないという選択になるかのどちらかでしょう。

「そもそもは自分の要求に始まるものなのだ」

ということを意識できれば、その要求に応えない相手を悪いと決めつける愚はおかさないはずです。

その愚かさに気づかずに、自分の要求は当たり前で正しいものだと疑わない人は、子育てで失敗し、結婚で失敗し、人生でも失敗するようになっています。

昨今の無差別殺人や、引きこもりの子殺しなどのニュースを見ると、愚かさに気づかないことが重大な犯罪の原因だということもよくわかると思います。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)
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