信頼関係をすぐ築くすごい裏技

歌声喫茶や合唱、あるいはブラスバンドなどが、参加している人たちに信頼感を与えてくれるのはなぜだろうという話です。

当教室でも、室長の興津寛枝がピアノを弾くので、歌声喫茶のようなことをやろうかと真剣に考えたことがありました。

筆者個人の経験ですが、もう三十年以上も昔のことですが、東京の日比谷だったか、東京駅からわりと近いところに小さなビアホールがあって、友人二人となにも知らずに入ったら、そこが歌声喫茶だったということがありました。

友人と三人でビールを飲んでいたら、店員さんたちがタンバリンなど鳴らしはじめて歌集が配られ、「じゃあ14ページ行きましょう『岬めぐり』ですよー!」という掛け声とともに曲が始まって、居合わせた客全員が歌いはじめたのです。

いきなりのことだったので面食らいましたが、消極的ながらもがんばって歌っているうちに、「なんだこの一体感は!」と、驚くとともに楽しくなってしまいました。

昭和三十年代ごろに歌声喫茶が大流行したのは、こういうことだったというわけです。

一体感、共感、信頼感……これがなぜかといえば、一緒に歌うからだとしか説明ができませんでしたが、最近そのからくりがやっとわかったように思います。それは、大嶋信頼さんという方が書かれた『無意識さん、催眠を教えて』という本を読んだからです。

この本には、呼吸合わせという、一種の催眠術のような技術が紹介されています。相手の呼吸を見て、自分もそれに合わせて、吸う、吐くをやっていると、相手との信頼感が生まれるという、脳のミラーニューロンが見せる現象を利用したテクニックです。

歌声喫茶では、全員がひとつ歌を合唱しますから、そこでも当然、息を吸うタイミング、吐く(歌う)タイミングが一致します。きっとブラスバンドなどもそうなんだろうと想像します。

つまり、特に音楽をやらなくても、呼吸を合わせているだけで、そこに歌声喫茶のような一体感が生まれてくるというわけです。音楽には趣味や好み、上手い下手がありますが、呼吸だけならなにもなくて誰でも一緒ですから、当教室でもこれを試してみたいと考えています。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)
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