Shizuoka Anger Management Workshop

米国心理学会 冊子「アンガーマネジメント」(翻訳: 2016.11.21)

怒りに制御される前に怒りを制御する

はじめに

誰もが怒りとは何か知っています。それが束の間のイライラなのか、増幅された強い激情なのかは別として、誰もが怒りを感じたことがあります。

怒りとは完全に正常な、通常は健康的な、人間の感情です。しかしそれが制御できなくなり、破壊的になると問題になってきます。仕事上の問題となり、対人関係上の問題となり、人生全体の質にかかわる問題となる可能性もあります。怒りとは予測不能な強い感情で、どうすることもできないものだと感じるかもしれません。この記事は怒りをより良く理解し、制御する上で役立つでしょう。



1. 怒りとは何か?

怒りの性質

怒りの研究が専門である心理学者、チャールズ・シュピールベルガー博士(Charles Spielberger, PhD)によると、怒りとは「軽いイライラから強烈な激怒まで、さまざまな強さの感情の状態」を意味するとしています。その他の感情と同様に、怒りは生理学的および生物学的変化を伴ます。怒ると心拍数や血圧が上昇し、エネルギー・ホルモン、アドレナリン、ノルアドレナリンも活性化されます。

怒りは外生事象または内生事象として生じます。怒りの原因は特定の人物(同僚や上司など)かもしれませんし、特定の出来事(交通渋滞やフライトのキャンセルなど)かもしれません。または個人的な問題について心配したり考えこんだりしたせいかもしれません。更に、トラウマや腹が立った出来事の思い出も怒りの感情を引き起こすきっかけとなります。

怒りの表現

怒りを表現する本能的かつ自然な方法は、攻撃的な反応を示すことです。怒りは脅威に対する自然な適応反応であり、強力な感情であり、攻撃的な感情や行動をともなうことも多いものです。我々は攻撃を受けると、この反応によって戦い、自分を防御することができます。従って、ある程度の怒りは生き残るために必要なものなのです。

一方で、イライラを感じたり不快に感じたりした相手全員を物理的に激しく攻撃することは不可能です。怒りは法律、社会基準、そして常識により制限されています。人は怒りの感情に対処するため、意識的に、または無意識的に様々なプロセスを利用します。3つの主な方法は「表現」「抑圧」「鎮静」です。怒りの感情を(攻撃的にではなく)明確に主張することは、怒りを表現する上で最も健康的な方法です。そのためには、自分の要求を明確にする方法、そして他人を傷つけることなく自分の要求を達成する方法を学ばなければなりません。明確な主張とは「強引さ」や「要求の多さ」ではなく、「他人と自分に対する尊重」を意味します。

怒りを抑制し、変換し、方向を変える方法もあります。怒りがわいた時はそれについて考えるのを止め、何かポジティブなことに集中すれば良いのです。目的は怒りを制御・抑制し、より建設的な行動へと変換することです。このように反応する上で危険な点は、怒りを外に向けて表現することが許されない場合、怒りが内に、つまり自分自身に向く場合があるということです。怒りが内に向くと、過度の精神緊張、高血圧、鬱などの症状が引き起こされる危険性があります。

表現されなかった怒りは、別の問題を生み出す恐れがあります。つまり、受動的攻撃行動(直接立ち向かうのではなく、理由を伝えずに間接的に仕返しをする行動)のような病的な怒りの表現につながったり、他人に敵意をもったり嘲笑したりする人格が生み出される場合があるのです。いつも他人にケチをつけ、全てを批判し、嘲笑的コメントを繰り返すような人は、怒りを建設的に表現する方法を学んでこなかったということです。当然のことですが、こういった人々はあまり良い対人関係を築けないようです。

最後に、内面を落ち着かせる方法があります。つまり外的行動を制御するだけでなく、内的反応を制御して心拍数を下げ、自分を落ち着かせ、感情を鎮静させるのです。

シュピールベルガー博士は、「この3つのテクニックがどれも上手くいかない時、それは誰かが、または何かが傷つく時である」と述べています。


2. アンガーマネジメント

アンガーマネジメントの目的は、怒りによってたかぶった感情と生理的興奮を落ち着かせることです。自分を怒らせる人や物を取り除いたり避けたりすることはできませんし、それらを変えることも不可能です。しかし、自分の感情的な反応は自分でコントロールできるようになるのです。

自分は怒りすぎている?

自分の怒りの感情の強さ、怒りの傾向、そしてどれほど上手に怒りを制御できるかを知るための心理テストはありますが、怒りの問題を抱えている人は、テストを受けるまでもなく既にそれに気づいているでしょう。制御不能な行動をとって人々を怖がらせているようであれば、より良く自分の感情に対処する方法を見つけるための手助けが必要でしょう。

なぜ普通の人より怒りっぽい人がいるのか?

アンガーマネジメントを専門とする心理学者であるジェリー・ディッフェンバッカー博士(Jerry Deffenbacher, PhD)によると、ある人々は他の人よりも本当に「せっかちで短気」であるといいます。彼らは普通の人より簡単かつ非常に激しく怒ります。また、大声で派手に怒るのではなく、常にイライラして気難しい人もいます。簡単に怒る人は、必ずしも物を投げたりののしったりするわけではありません。このような人々は時として社会から切り離されたり、ひねくれたり、身体的に病気になったりします。

簡単に怒る人は、心理学者の言葉でいうと「フラストレーションに対する耐性が低い」ことが多いです。つまり彼らは単純に、フラストレーション、不便さ、不快さを我慢する必要はないと感じているのです。彼らは冷静に物事を受け止めることができず、状況が少し不当だと感じると非常に激怒します。例えば、小さな間違いを指摘された場合などです。

どうしてこのように怒りっぽい人々がいるのか? 原因はいくつか考えられます。一つ目は、遺伝または生理学的問題です。生まれつきイライラしやすく、敏感で怒りっぽい子供たちがいることが立証されていて、このような兆候はごく幼い頃から見受けられます。他には社会文化的な問題が考えられます。怒りは悪い事であるとみなされることが多く、不安、落ち込み、その他の感情を表現するのは正しいことだが、怒りを表現するのは悪いことだと教えられるのです。その結果、怒りに上手く対処したり、建設的な方向に切り替えたりする方法を学ぶことができなくなります。

また、研究結果から家族背景も一因となることがわかっています。すぐに怒る人は破壊的、複雑、混とんとしている、感情のコミュニケーションをとるのが下手などの特徴をもつ家庭に育っていることが多いのです。

「包み隠さずに全て話す」のは良いことか?

今では、心理学者はこれを危険な神話と呼ぶ。他者を傷つける際に免罪符としてこの理論を持ち出す人もいます。しかし研究結果からは、怒りのあまり「全てをぶちまける」と、実はかえって怒りや攻撃性が増し、自分(または怒りを感じている相手)の問題解決の手助けには全く役立たないことがわかっています。最善の方法は、何が自分の怒りのきっかけとなるのかを見つけ、そのきっかけが自分の感情を爆発させないようにする方法を考えることです。


3. 怒りを寄せつけない方法

リラクゼーション

怒りの感情は、簡単なリラクゼーション方法である深呼吸やイメジェリー(リラックスした状況を思い浮かべること)を用いて抑えることができます。リラクゼーション・テクニックを学ぶための本やコースもあります。これらのテクニックはいったん学習したら、どのような状況でも用いることができます。もしあなたとパートナーが2人とも短気であるなら、2人でこのようなテクニックを学ぶとよいでしょう。

簡単に試せるステップ:

1. 深い腹式呼吸を行う。胸でする浅い呼吸ではリラックスできないため、「腸」から息をするイメージで。

2. 「リラックスして」「気を楽にして」など、穏やかな言葉やフレーズをゆっくり繰り返す。深呼吸をしながら自分自身に向かって繰り返しこれらの言葉を話しつづけること。

3. イメジェリー(リラックスした状況を思い浮かべること)を用いる:自分の記憶をたどるか、想像上のリラックスした光景を思い描く。

4. ゆったりとしたヨガなどの穏やかな運動を行なうと筋肉を弛緩させ、非常に穏やかな気分を感じることができる。


毎日これらのテクニックを実践することで、緊張する状況に陥った時にこれらのステップが自動的に実行できるようになります。

認識の再構築

これは簡単に言うと、考え方を変えるということです。怒りやすい人は自分の内的な考えを反映する様々な表現で呪いの言葉を口にしたり、ののしったり、悪態をついたりする傾向があります。怒っている時は考えが誇張されたり、ドラマチックになったりしがちですが、そのような考えを合理的なものにする努力をするべきです。例えば「ひどい、最悪だ、何もかもおしまいだ」と言うかわりに「フラストレーションを感じるこの状況で、自分が怒りを感じるのは当然だ。でも世界が終わるわけではないし、怒ることで問題が解決するわけでもない」と自分に言い聞かせるのです。

自分や他人のことを話すときに「決して〜ない」とか「必ず」という言葉を用いるのは注意が必要です。「この○○という機械は決して動かない」や「あなたは必ず忘れる」などの言葉は不正確なだけでなく、怒りを正当化することで他に問題解決の方法がないと自分自身に思いこませてしまいます。また、その言葉を言わなければ問題解決のためにあなたと共に行動しようとしてくれたかもしれない人々を遠ざけ、侮辱することにもなります。

怒りは何も解決しないし、それによって気分が良くなることもない(むしろ気分が悪くなる)ということは覚えておくべきです。

論理は怒りに打ち勝ちます。なぜなら怒りは、たとえ正当化してもすぐに不合理だとわかる場合が多いからです。だから自分には冷厳な論理を用いるべきです。

世界は「あなたを倒そうとしているわけではない」こと、「今はただ日常生活における困難を経験しているにすぎない」ことを思い出すのです。怒りが頂点に達しそうだと思うたびにこの方法を繰り返すことにより、よりバランスのとれた物の見方をすることができるようになります。怒りやすい人は、色々なことを欲求する傾向にあります。例えば公平さ、感謝、賛同、または彼らの好きな方法でやりたいという希望などです。それは誰もが望むことであり、実現しない時は誰もが傷つき、落胆します。しかし怒りやすい人は、要求が通らないと失望が怒りに代わるのです。

怒りやすい人が自分の認識を再構築する一つの方法として、要求の性質を把握した上で「期待」を「要望」として表現すると良いでしょう。つまり、「〜したいものです ( I would like to )」と言うのです。これは「〜を要求する ( I demand )」という言い方や「私は〜して当然だ ( I must have )」という言い方よりも健康的です。自分の望みがかなわない時、人はフラストレーションを感じ、失望し、傷つくといった普通の感情をもちます。しかし、それは怒りではありません。怒りやすい人の中には、怒りの感情によって傷つくのを避けようとする人がいますが、それでは傷つくのを避けることはできません。

問題解決

時には、怒りやフラストレーションが人生における非常にリアルで避けられない問題から生じることもあります。全ての怒りが間違いというわけではなく、そのような困難に対しては健康的で自然な反応である場合も多いです。また、どのような問題にも必ず解決策があるはずだという文化的信念が、必ずしもそうではないと気づいた時にフラストレーションの原因になる場合もあります。このような状況下での最善策は何かというと、解決策を見つけることに重点を置くのではなく、問題にどのように直面し、対処するかという点に重点を置くことです。

計画を立て、それに沿った進行状況をチェックすると良いでしょう。そしてそれに全力を尽くすという強い意志をもつのです。しかし、答えがすぐに見つからないからといって自分自身を罰してはなりません。もし強い意志をもって全力で問題解決に臨み、正面から真剣に向き合う努力をすれば、たとえ問題がすぐに解決されない場合でも忍耐力を失ったり、一か八かの考えに陥ったりする可能性は低くなるでしょう。

より良いコミュニケーション

怒りやすい人はすぐに結論に飛びつきがちですが、その結論が完全に間違っている場合もあります。白熱した議論の最中でまずすべきことは、落ち着いて自分の反応についてよく考えることです。頭に浮かんだ最初の言葉を口にせず、落ち着いて自分が何を言いたいのかよく考えなければなりません。同時に相手の言い分をよく聞き、答える前に十分な時間をとらなければなりません。

また、何が怒りの根底にあるのかをよく考えなくてはなりません。例えば、自分はある程度の自由と一人だけの空間がほしいのに対し、「パートナー」はより多くのつながりや親密さを求めているというような場合です。もしパートナーがあなたの行動について不満を言いはじめても、パートナーを看守や監察官であるかのように見たり、それが重荷だと言い返したりしてはなりません。

批判されたら防御したくなるのは自然なことでが、反撃してはいけません。代わりに、その言葉の根底にある意味をよく考えてみることです。そこには、パートナーが無視されているか愛されていないと感じているメッセージが含まれているかもしれません。我慢強く多くの質問をしなくてはならないかもしれませんし、少し考える時間が必要かもしれません。しかしあなたやパートナーの怒りを、制御不能な議論にまで発展させてはなりません。冷静さを保てれば、破壊的な状況に陥らなくて済むのです。

ユーモアを利用する

「馬鹿馬鹿しいユーモア」は、様々な方向から怒りを鎮める手助けをしてくれます。まず、もっとバランスのとれた物の見方をすることができます。もし誰かに腹を立て、想像上の言葉を言いそうになったら、それを止めてその言葉を文字通りにするとどう見えるのかをイメージしてみることです。例えば職場で同僚に対して「ダートバッグ(汚れた袋=汚い奴)」や「単細胞野郎」という言葉が思い浮かんだら、大きな汚い袋(またはアメーバ)が同僚の席に座り、電話で話し、会議に出席しているところを想像してみるのです。他の人にも、何か呼び方が思い浮かんだら同じことを片っ端からやってみましょう。そして可能であれば、実際にそれがどう見えるかを絵に描いてみましょう。そうすると激しい怒りはだいぶ収まることでしょう。ユーモアは、緊迫した状況を緩和する上でいつも役に立ちます。

ディッフェンバッカー博士によると、非常に怒りやすい人の根底にあるメッセージとは「ものごとは私が思う通りにならなければいけない!」というものだということです。怒りやすい人は、自分は道徳的に正しいと考えていて、自分の計画が阻止されたり変更されたりすることは耐え難い屈辱であり、自分はこのような苦しみを受けるべきではないと考えます。他の人はそうかもしれないが、自分は違うのだ! と。

博士は、「もし怒りの衝動を感じたら、自分が最高統治者である神か女神であると想像しなさい」と提案しています。自分は通りや店、オフィススペースを全て所有しており、他人がみな自分に従う中、一人で大股でそこを歩き、あらゆる状況で自分の思い通りに行動しているところを想像するのです。想像上の場面をより具体的に思い描けば思い描くほど、それが不合理な状況であることを理解できるでしょう。そして自分が本当に怒っていた内容がどれほど取るに足らないことだったかも理解できるでしょう。ユーモアを利用する際の注意点は2つある。1つめは、自分の問題をただ「笑い飛ばそう」としないことです。ユーモアはむしろ、自分とより建設的に向き合うために利用するべきです。2つめは、辛辣で皮肉なユーモアを利用しないことです。それは違う形で怒りを表現する不健康な方法だからです。

これらのテクニックに共通しているのは、自分をあまり深刻にとらえないようにするという点です。怒りは真剣な感情ではありますが、よく考えると面白い考えがともなっていることも多いのです。

環境を変える

イライラと激怒の原因が、直接自分を取り囲んでいる周辺環境にある場合もあります。問題と責任が重くのしかかり、自分が怒りを感じるための「罠」に陥っているように感じ、全ての人々や物事がその罠を形作っているように感じられるような場合です。

その場合は休息をとるべきです。特にストレスが多いだろうことがわかっている日には、必ずある程度の「自分の時間」が持てるようスケジュールを組みましょう。例えば、仕事をもつ母親であれば、職場から帰宅した最初の15分は「家が火事にでもならない限り、誰もお母さんに話しかけない」というルールを作るのです。この静かで短い時間が過ぎた後は、子供に怒りを爆発させることなく彼らの要求に対処できる良い精神状態になっていることでしょう。

自分を楽にするその他の方法

タイミングを変える:
配偶者と夜に話し合いをするといつもケンカになるようであれば(疲れている、気が散っている、またはただの習慣である等、さまざまな理由があるのでしょうけれども)、話し合いがケンカにならないよう、重要なことを話す時間を変更することです。

回避する:
もし子どもの汚い部屋に入るたびに激しい怒りを感じるのであれば、ドアを閉めてしまいましょう。自分が激怒するとわかっていることは見ないようにすることです。「私が怒らないですむよう、子供が部屋を片づけるべきだ!」とは言わないことです。そこは重要なポイントではありません。重要なのは、自分を穏やかに保つことです。

他の選択肢を見つける:
毎日の通勤路が怒りと欲求不満をもたらすのであれば、自分にプロジェクトを与えましょう── それほど混んでいないか、眺めの良い他の通勤路を見つけるか探し出すのです。またはバスや電車通勤に切り替えるなど、ほかの選択肢を見つけると良いでしょう。



以上の内容は、原典 http://www.apa.org/topics/anger/control.aspx の英文を理解していただくため、当教室にて和訳させていただいたものです。

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