多様な価値観と倫理のこと

戦前の価値観を引きずってすらいた昭和のころなら、相手との価値観の違いについて、さほど寛容ではないという人も少なくなかったかもしれませんが、平成となり、21世紀となってさらに20年が経とうとしている昨今、もはや移民受け入れは必須という声さえ珍しくなくなってきて、日ごろから、コンビニなどで外国人店員に接客されるのも普通ということになってきますと、自分の常識が必ずしも相手に通じないという認識をもたないことには暮らしづらい日本社会になってきました。

そんな中、近づくオリンピック開催で「顔」を演じ、NHK教育番組のレギュラーでもあるという芸能人が、法律でも厳しく禁じられている未成年者へのわいせつ行為をしたということで、刑事事件になろうとしています。

彼ひとりの問題ではないはずで、「人気以外に素養は不要」の「芸能人」の世界には、きっとまだ古くて陰湿な価値観が残っているんでしょう。筆者も娘二人(もう成人していますが)の父親として、暗澹たる気持ちになってきます。

もうこのへんで、芸能界やテレビの世界の人たちは、自分たちの価値観をすべて洗い出して見直す時期にきているんだろうと思います。

なにが当たり前で、なにが当たり前でないのか、なにが悪いことで、なにが正しいことなのか、いくら多様化したとはいっても、異なる価値観をもつ者どうしがひとつの社会に共存していくためには、最低限度の倫理観を共有する必要があります。

それを警察が監視するのが法律ですが、警察に訴えられなかったらやっても大丈夫という「悪事」を働く「影の犯罪者たち」を、「芸能界」や「テレビ界」はまだ大勢隠しているのではないかと思われてなりません。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)

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