思考能力という両刃の剣

私たち人類の本質は社会性にあります。一人ひとりの違いは個性であり、個性はもちろんそれぞれであって良いものですが、個性がそれぞれだからといって、社会性というみんなに共通の本質までもがそれぞれだとはいえません。

個性によって異なることというのは、一人ひとりのアイデンティティーのためですから、顔や体格や性格というのは人それぞれで、それが異なることによって、その人が誰であるかということがわかる仕組みになっているようです。

そんな個性の中でも、感性・思考能力・言語能力といったものは、とかく人と人とを比較して優劣をつけるために取り上げられることがあり、それを知能指数(IQ)で表したりしますが、それだけで人格までをも測ることはできません。

知能指数のそうした欠点を補うために、「心の知能指数」と呼ばれるEQが注目されたことがありました。

EQではやはり社会性が重要視されていて、他者との関係をより良いものに高めたり保ったりする能力というものが、私たち人類にはどうしても必要だと考えられています。

ですから、人類が特有のものとして持っている思考能力というものも、社会性や人間関係のために役立てることができているばかりなら良いのですが、現実にはそれとは反対の用途に使われてしまうこともあります。

そのような好ましくない用途のことを、アンガーマネジメントステップアップ講座思考編では「怒り思考」と呼んで、なんとしてもその思考による束縛から自由になろうということで、社会性を最優先とする思考方法を提案しています。

人類だけが持っている思考能力や言語能力というのは、天使にもなれば悪魔にもなるということです。思考能力は両刃の剣なんですね。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)

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