マインドフルネスとアンガーマネジメント

最近はテレビでも紹介されるようになってきた「マインドフルネス」。

どんなものかと簡単にいえば・・・

「過去や未来を排除して今この瞬間だけを楽しんで意識する」

・・・ということ? それだけなんでしょうか?

たとえばご飯を食べている時なら、食べ物の色艶や香りを楽しむこと、お箸でつまんだものの感触などから始まって、それが口の中に入った感触、歯ざわり、舌触り、もちろん味と香り・・・噛んでいる時の顎の動きや歯茎に加わる力、呑み込んだ時の喉を通る感触などなど、その瞬間、その瞬間に感じられることだけに集中して楽しむということ・・・。

歩いている時なら、顔に触れる風や空気や陽射しを楽しみ、足の筋肉や足裏などの力の入り方や地面の感触などを楽しむ・・・。

こうしたことが、「瞬間、瞬間だけを楽しんで意識する」ということで、それ以外の種々のことが「思考」(あるいは「雑念」)になって、それに支配されてしまうことがないようにする・・・。そのために、今この瞬間とは関係のない様々な問題については、全部それを遮断してしまえるだけの集中力を鍛えよう・・・。

誰でも、いつでも、どこで何をしていても、とても簡単に実践できそうである反面、集中力を鍛えることについては相当に難しそうでもありますが、もしそれでもストレスの緩和に一定の効果があるということなら、マインドフルネスっていいね! ということになります。

ただ、このような「マインドフルネス」とされる「瞑想」を実践したからといって、自分が感情面で抱えている問題が解決するのかというと、ちょっとそこまでは想像できそうにありません。

ひとりひとりが抱えている問題からくるイライラやストレスの根本原因というのは、実は私たちの無意識の中にあって、それを知るということ、つまり、今までは無意識の中にあったその原因を意識の表に取り出すということを、ただ瞑想するだけの「マインドフルネス」に期待できるかというと、ちょっとそれは難しいと思えるんですね。

瞑想でできることは、ただひたすら今という瞬間だけを楽しむということですが、私たちはひとりひとりが個別に感情面の問題を抱えていて、それによって悩んだり苦しんだりしています。

思考を「今だけ」にするというのも、実は一時的なことであって、「マインドフルネス瞑想」の効果というものも、一時的な満足感を増やしていくということにはなるんでしょうけれども、それ以上でもそれ以下でもなさそうです。

それ以下でないというのは、それがたとえ一時的な満足感であっても、毎日何回も実践することによって「良い経験」を増やすということになりますから、その瞑想がゆくゆくは「良い判断」をする能力を高める、つまり、イライラを起こしている扁桃体の緊張を和らげて前頭前野による調整能力を高めるということに、つながらないわけではありません。

ただ、それだけでは個別の感情面の問題はなかなか解決しないということです。

マインドフルネスの瞑想それ自体は、そもそも紀元前のインドに始まる仏教の思考法を取り入れ、そこから宗教色を排除して磨きあげられてきたものですから、それが素晴らしいものであることは間違いないんですが、同じく間違いないといえるのは、「マインドフルネスは瞑想だけでは万能ではない」ということです。

静岡教室のアンガーマネジメントステップアップ講座「思考編」では、今まで意識できなかった怒りやイライラなどのストレスの根本原因をはっきりと意識できるようにするという、いわば【根本的な解決】を目的としています。

もしそれで根本的に解決するとしたら、なぜなのかといえば・・・、それは、マインドフルネスの考え方と目的を、ひとつのメソッドにすぎない瞑想に偏重させないからです。

というより、必ずしも特定の瞑想をしなくても、マインドフルネスの本当の目的を達成することが可能なんです。

本当の目的とは、私たちが抱えている “感情面の問題” を解決することです。

「職場の人間関係が原因で、ストレスがたまってしまう」
「人を見下したような上司の態度にどうしてもガマンできない」
「同居している父の要求に応えられず、いつも家では部屋に閉じこもってしまう」
「時々口をきかなくなる夫といっしょにいるのがつらい」
「隣の家の人がちょっとのことで怒鳴り込んでくるので毎日ビクビクして暮らしている」
「パチンコ好きの先輩がいてたびたび金を貸せといわれて困っている」
「財産分与のことで兄弟関係がひどいことになってしまった」
「妻に離婚すると脅されている」
「母の介護で心身ともに限界を感じている」

・・・などなど、人それぞれに、解決が難しい感情面の問題を抱えています。

そんな問題に対して、できれば【根本的な解決】を目ざして、そのためにこそ有効なメソッドとして、マインドフルネスの考え方や、マインドフルネスのエクササイズを取り入れたいのです。

何人も何十人も集まってみんなで瞑想・・・ということよりも、問題の解決に向けて今からすぐ取り組んでいく・・・ということをやってみようということです。

マインドフルネスを漠然としたメソッドとしての「瞑想」だと捉えていたのでは、せっかくの素晴らしいメソッドの効果を十分に得ることはできません。

アンガーマネジメント静岡教室では、マインドフルネスの考え方そのもの(特に瞑想ではないもの)を重要なメソッドのひとつとして、心理学における認知行動療法や、最新の脳科学から得られた有効な知見も活用し、問題解決のエキスパートとして個別のカウンセリングでご指導します。

個別のカウンセリングにつきましては、これまでは「アンガーマネジメントステップアップ講座思考編」の受講者を対象に、随時おこなってきておりますが、今後はより広く大勢のみなさんのお役に立てるよう、80分〜90分程度の個別指導プログラムを始める予定です。

それ以前でも、ご相談は随時受けつけておりますので、どうぞご遠慮なくお問い合わせください。

詳しくはこちらです。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)

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