「物質ではないとされる魂は存在するか?」
その答はまだ物理学などでは何とも特定しようがないというのが現状かもしれませんが、その定義のしかたによっては特定できないとも限りません。
「魂=私たち人間の本質」とした場合、進化するにしたがって巨大化してきた脳の性質とその進化の目的が「社会性」であるという結論が出ています。(マシュー・リーバーマン著『21世紀の脳科学』など)
人間の本質は社会性、つまりきずなをもつことですから、それが魂だということになります。
一方で、物理学には「ホログラフィック原理」という理論があります。
例えば、ブラックホールに「石」が吸い込まれたとします。
石は原子レベルでバラバラにされてしまうんですが、バラバラの原子をもとの石に戻すためには、原子をどんな構成で組み立てたらいいかという「情報」が必要になります。
その「情報」は、この理論によれば「失われることがない」のだそうです。
宇宙にはそもそも物質が存在しませんでした。宇宙は「無」から始まったんですね。それが最新科学では定説になっています。
その「無」の状態から、138億年前に「インフレーション」「ビッグバン」という段階を経て、物質が無限に生み出されてきます。
この理論では、「無から物質が生み出されたのは情報が存在したから」だと考えられているそうです。
「情報」とは、物質そのものではなく、物質のあり方です。
私たち人類がここまで進化してきて、「人類のあり方」という情報の本質に「社会性」というものがあるのだとして、「社会性」という情報は物質ではありませんから、物質ではない魂というものが存在するのだとしたら、やはりそれは「社会性」であるということになるでしょう。
2013年にアドマック出版から上梓した『パーミストリー 〜人を生かす意志の話〜』という拙著の中では、「魂とは生かす意志である」と書かせていただきましたが、その「意志」を、この「情報」と読み替えることで、この理論とも矛盾しないのではないかと考えます。
人間だけでなく、宇宙にある森羅万象すべての存在についていえば、「社会性」という「本質」はすべてに当てはまるわけではありません。
すべての存在に共通してある本質ということでいえば、それはただ「生み出せ、生かせ」ということでしかないと考えることができるのではないでしょうか。
今の宇宙は光速を超える速度で膨張を続け、いずれはまた全ての物質が無に帰すという段階を迎えるのだと考えられていますが、何もかもが消滅してしまうブラックホールのような場所においても、物質的存在を構成するための情報だけは消滅しないで残るということですから、物質が何もかもなくなってしまった宇宙においてさえ、「生み出せ、生かせ」という情報が不滅のものとして存在しつづけるわけです。