相手の怒り思考を満たしてやるという選択

あなたに仮にいがみ合っている相手がいたとしたら、その人はあなたに対してこんなことを思っているかもしれません。

「悪いのはあいつ(つまりあなたのこと)だ。それなのにあいつは自分が正しいと思っている。正しいのはこっちだ。なんとしてもそれを認めさせてやりたい」

このような思考のことを、当教室の思考法講座(アンガーマネジメントステップアップ講座思考編)では「怒り思考」と呼んでいます。

「怒りは二段階でやってくる」という事実があって、最初の怒りは「痛い!」というのと同じ「反射」です。そして次にやってくるのが「怒り思考」です。

反射である最初の怒りはどうにもなりませんが、次の「怒り思考」はなくすことができます。それをなくしていくのがアンガーマネジメントです。

今回のコラムでは、さらに踏み込んで「相手の怒り思考を満たしてやる」という大技について書いてみます。

いがみ合う相手「悪いのは向こうだ。自分は悪くない。自分が正しいことを認めさせたい」

このように思っているわけですが、もしあなた自身も、相手の人と同じことを思っていたとしたら、いがみ合いはずっとそのまま。そのままならまだしも、深い憎悪に発展してしまう危険すらあるわけです。

そこでこれをすぐに終わらせる必要があるんですが、「怒り思考」というのはどこまでいっても「自分を正当化すること」です。同時に「相手を非難すること」です。相手に対する要求としては、「相手に間違いを認めさせ、こっちの正しさを認めさせたい」ということです。

つまりここには、相手が「欲しがっているもの」があります。

何を欲しがっているかといえば、ものではなく「こと」。「どっちが正しいと認めるということ」と「どっちが間違っているか認める」ということです。そして、正しいのはその人であり、間違っているのはこっちなのです。

「それが認められないからいがみ合ってるんじゃないですか!」

あなたはきっとそう思うでしょうけれど、じゃあもしそれを認めたとして、失うものは何でしょう? 得られるものは何でしょう?

あなたも、相手も、どちらもまったく同じことを思っています。「自分が正しい。あっちが間違ってる」

お互いに「自分が正しくて間違ってるのはあっちだ」と思っているから対立してしまい、反目してしまって、このままいくと憎悪に発展し、さらに最悪の事態にもなりかねません。

つまり、「譲らない」ことによって失うものというのは途方もなく大きなものになる危険があるわけです。

そこで「完全に譲ってしまう」、つまり「私が間違っておりました。あなたが正しうございます。すみませんでした」と言って「謝罪してしまう」という選択があるわけです。この選択を実行すれば、最悪に向かう危険は回避されます。安全に向かうわけです。得られるものは大きいということです。

同時に考えなければならないのは、得られるものが大きい謝罪という選択によって、何を失うかということです。

失うことが大きい。取り返しのつかないことになる。ということなら、「謝罪してしまう」という選択にも危険があって、決して正しい選択にはなりません。

「謝罪してしまう」というのは、「相手が欲しいと思っているものを与える」という選択です。

もしその選択をしたとしても、「取り返しがつかなくなる」などの失うものがほとんどないということなら、是非とも「謝罪してしまう」「与える」を選択したいものです。

Akira Okitsu
【興津諦プロフィール】昭和35年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。認知科学研究、語学教育、文筆活動、アンガーマネジメント・メンタルトレーニング、ウェブサイト、グラフィックデザインなど、共感を得るための広範なコンテンツ開発を専門とする。平成6年大修館書店『言語』誌にて、時制や相に表れる認識の根本原理の存在を世界で初めて指摘。平成24年静岡商工会議所観光飲食部会にて地域資源発掘のためのテーマコピー「余ハ此處ニ居ル」を発案後、久能山東照宮神廟の研究に関わることとなり『季刊すんぷ』を発行。平成27年静岡市公式観光サイトの主要コンテンツ『極楽都市しずおか』を企画制作。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】■『日本語入門』(平成5年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社)■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』平成6年12月号)■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(平成10年新風舎出版賞受賞)■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(平成23年〜24年SBSラジオ)■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(平成25年アドマック出版)■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(平成25年アドマック出版)■『余ハ此處ニ居ル ─ すんぷ特別版』(平成27年アドマック出版)

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