自分で増幅させている怒り

毎日のように、信じられないような事件が起きています。

私たちが日本にいて知ることができる事件は限られていますが、治安の良いはずの日本でも、凄惨な事件が続きます。

怒りを抑えることができずに犯行に及ぶというのが傷害事件や殺人事件ですが、「自分をここまで怒らせた相手が悪い」と犯人が考えていることが多いようです。

当教室では「怒り思考」「ワルイ思考」などと呼んで、怒りを自分で増幅させてしまう思考をなくすための講座を開催しています。

怒りには二段階あって、最初の「ムカっ!」「イラっ!」「カーっ!」というのは「脳の反射」であり、足をぶつけて「痛いっ!」というのと同じなので避けられませんが、その次にくる「怒り思考」については、誰に教えられなくてもそんな思考をしないという人と、いくら教えられてもその思考をどうしても続けてしまうという人がいて、そこに個人差があるんですが、そんな思考さえしなければ、最初の「ムカっ!」「イラっ!」「カーっ!」は自然と収束して平穏な心に戻ることができます。

つまり、「怒り思考」というのは「自分を怒らせた相手のせい」ではなくて、「思考をしてしまう自分のせい」なんですね。

そのように、最初の反射を受けて思考して、自ら怒りを増幅させているのが問題になるわけです。

怒りを増幅させる思考さえしなければ、他者や自分を傷つけたり殺したりするようなことにはならないのですから、犯行に及んだ犯人が「相手のせいだ」と考えているのは、明らかに間違いです。

怒りのメカニズムは、1に反射、2に思考ですから、1の反射だけなら犯行とまではいかないはずなのです。

怒りを増幅させているのは、自分でそう考えること、つまり、2の思考そのものです。つまり犯行の原因は、そのほとんどが犯人自身の思考だということになるんです。

Akira Okitsu
1960年6月静岡市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。語学教育と教員指導の経験から、脳科学・心理学・言語学からなる認知科学の研究を始め、1994年言語学専門誌『言語』(大修館書店)にて、無意識下で「(見え)る/(見え)た」などの語形を決定する認識の根本原理の存在を言語学史上初めて指摘する。認知科学の知見を実用化して、アンガーマネジメント・メンタルトレーニングプログラムの開発、観光振興関連コンテンツの開発を行っている。アドマック株式会社代表。日本認知科学会会員。 【著書・著作】 ■『日本語入門 The Primer of Japanese』(1993年富士国際日本語学院・日本語ブックセンター創学社) ■『新しい日本語文法』(大修館書店『言語』1994年12月号) ■『夢色葉歌 ─ みんなが知りたかったパングラムの全て』(1998年新風舎出版賞受賞) ■『興津諦のワンポイントチャイニーズ』(2011年〜2012年SBS静岡放送ラジオ) ■『パーミストリー ─ 人を生かす意志の話』(2013年アドマック出版) ■『日本語の迷信、日本語の真実 ─ 本当の意味は主観にあった』(2013年アドマック出版) ■『余ハ此處ニ居ル ─ 家康公は久能にあり』(2019年静岡新聞社)
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